葛西 マンションの対象
葛西 マンションの対象
中心部から離れた不便なところは家賃を安くして、相対的に魅力のある中心地においては、仮設住宅の家賃も高いものに設定する必要がある。
被災者は配布された切符を用いて仮設住宅に住むこともできるし、民聞の賃貸住宅に住むこともできる。
十分な数の民間住宅が建設されるには、2年間は必要であろう。
もし、仮設住宅の使用期限を厳格に運用できれば、民間の賃貸住宅供給者は仮設住宅の期限の切れる2年後の需要を予測して、新規の住宅建設を企画するだろう。
これと住宅切符制を併用すると、仮設住宅の期限が切れる二年後に向けて民聞の賃貸住宅の供給が促進される結果、2年後には民間の賃貸住宅に多くの人たちが吸収されることになるだろう。
仮設住宅はあくまで期間限定の住宅である。
その原理原則を重視して、仮設住宅はあくまで仮設住宅としてのクオリティを追求すればよい。
2年後には民間賃貸住宅が供給されるので、所得水準の低い人たちは以前と同じような住宅切符が配布される結果、同じような住宅サービスを受けることが可能になる。
ここで重要な点は、仮設住宅の使用期限を厳格に守ることである。
これが守られないと、民聞の賃貸住宅は供給されなくなってしまう。
それならば、そもそも政府や自治体がしっかりした住宅を早急に建設して、それを長期永住可能な公的住宅として供給してはどうかという代替的な案が考えられる。
しかしこのような公的住宅を建設することは居住を既得権化させてしまい、先に述べたモラルハザードの問題を引き起こす。
被災した人たちを救済するために堅固な住宅や、十分な質を備えた住宅を供給することは、短期的に人々の公正の感覚に合致するかもしれないが、長期的には大きなむだを引き起こす可能性が高い。
それは、人々の自己再建意欲を阻害してしまうからである。
被災者の生活を長期的に保障する住宅を提供することは、被災者のなかに存在する所得水準の高い人たちを過度に保護したり、被災者たちの再建努力を失わせることになる。
また、そもそも長期の居住に耐えるような住宅を大量に建設するには、時聞がかかり、緊急事態に対応するのは無理である。
公的住宅は、その意味で望ましくない。
したがって、あくまでも緊急避難的な措置として仮設住宅の建設が認められるのである。
また、この住宅は仮設であって、早急に建設しなければならないという条件を満たすために、必要最小限の機能を備えたものであればよいと考えられる。
他方、仮設住宅の建設が、民間住宅の建設や賃貸住宅の供給を阻害してはならない。
そのために、住宅切符制によって低所得水準の人たちゃ高齢者の生活を保障することが必要である。
住宅切符制は民間による建設のインセンティブを阻害せず、被災者の生活を守ることができる。
また、これを速やかに実現するためには、2年間程度の時限付き仮設住宅を建設することが望ましい。
さらに、このような大震災といった緊急事態に対しては、定期借家権は有効な機能を果たすだろう。
2年間といった限定的な借家契約を用いれば、多くの住宅が賃貸住宅として供給されることになるだろう。
さて、望ましい住宅政策とはそもそも、いかなるものだろうか。
住宅政策は、社会保障あるいは再分配政策として考える必要がある。
一般に、政府介入が支持されている根拠として、市場の失敗が存在しなければならない。
市場が失敗するケースとしては、外部性や規模の経済性、公共財の存在などがあるが、住宅というサービスについて、これらが妥当するという十分な証拠はない。
したがって、市場の失敗を理由に、政府が住宅市場に介入することは容易には認められない。
これに対し、一般的に民間住宅が不足しているから、公的に住宅を供給することが望ましいとする議論がある。
しかし、この議論には大きな問題点がある。
民間住宅の不足をどのように定義するのかという、たいへん困難な問題がある。
「住宅が高いから安くしろ」というのは、より大きなむだが発生することを無視した議論である。
したがって、効率性の観点から、政府による公的な住宅市場への介入を正当化するのはむずかしい。
このような意味からも、再分配政策としての住宅政策は再考すべきであろう。
富めるものから貧しいものへの再分配政策として住宅政策を考えると、望ましい住宅政策とはいかなるものであろうか。
多くの国でそうであるように、住宅問題というのは政治問題化しやすい。
日本でも住宅については外国同様、さまざまな補助や規制がある。
公的な主体による住宅の直接供給をはじめ、税制上の優遇措置、また民間主体の住宅建設や購入に対する補助、さらには住宅供給者に対する補助など、かなりのものが存在する。
しかし、一定の所得水準以下の人たちを保護するには、所得の再分配によって実施すべきである。
住宅の需要や供給に補助をつけること自体に説得的な論拠を与えることは、それほど簡単ではない。
衣食の足りてない人々に住居を与えることは、本当に望ましいことなのかという公平性の問題がすぐ頭に浮かぶ。
また、所得による再分配ではなく、家賃補助による分配が望ましいという論拠も説得的ではない。
この点を、もう少し詳しく説明しよう。
住宅補助には次のような問題点がある。
いま住宅に一定の補助金を与える場合を考えてみよう。
住宅価格が実質的に低下する結果、人々は自分が住みたいと思う住宅よりも、より大きな住宅を需要しようとする。
本来なら住宅を節約して衣食にあてたほうがいいという人も、家賃補助のためにより大きな住宅に住む結果になってしまうかもしれない。
このときに、もし家賃補助ではなく、所得補助が与えられた場合はどうであろうか。
そのときは閉じ金額の補助である場合でも、いまよりも住宅を節約して、他の衣食により多くの支出を割くことになるであろう。
貧しい人々に対する再分配のあり方として、所得ではなく住宅そのもので供給すること自体に、果たして合理的な根拠があるだろうか。
所得水準の低い人々がいまの住宅よりも必ずしも大きな住宅を望んでいるとは限らないし、また住宅でなく所得で補助されれば、住宅よりも必需性の高い財に需要を振り向けるかもしれない。
そのような合理的な人々の行動を無視して、政府が住宅での補助を考えることに合理性を認めるのはむずかしい。
短期的な住宅不足と長期的な住宅不足この意味でも、終戦直後の日本が経験した大量の住宅不足や大震災直後の一時的な住宅不足と、高度成長期に見られた住宅不足とは、分けて考える必要がある。
所得水準が上昇する過程で住宅需要が増加したり、より大きな住宅に対する需要が増加することは当然の現象である。
需要曲線が右にシフトする過程で住宅に対する超過需要が発生する。
しかし、これは市場メカニズムにまかせることが望ましい。
これに対して、前者の一時的な住宅不足に対しては、仮設住宅といった公的な支援が必要とされる。
しかし、前述のように、この公的な支援は、民聞の住宅供給を阻害するものであってはならない。
住宅切符制度は、右に述べた家賃補助制度と実質的に同じである。
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